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実務実習(学校薬剤師編)

学校薬剤師と「くすり教育」

【背景】
 世界保健機構(WHO)では、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てをすること」を「セルフメディケーション」と定義しています。一方で、現代社会では、食生活の変化やストレスなどが関与するといわれているアレルギー性の疾患や生活習慣病の増加、さらには高齢化による疾患の増加などがあげられています。
 セルフメディケーションは、各自の判断だけで疾病の予防・治療を行うことだけではありません。保健・医療機関を有効利用することが必要であることと共に、「健康管理・医薬品への正しい知識の向上」が重要な条件となります。
 また、2006年6月には改正薬事法が告示され、一般用医薬品の販売制度が大きく変わりました。同時に、改正時の附帯決議で学校教育における「くすり教育」に言及されたことも留意しなければなりません。
 一方で、厚生労働省と文部科学省はおのおのセルフメディケーション推進のための環境整備を進めいています。(表1)
 社会は、学校薬剤師の「くすり教育」への積極的な参画を期待しているといわれています。
【新学習指導要領】
  教育現場においては、2008年3月公示の中学校学習指導要領で、保健体育:保健分野において、「健康の保持増進や疾病の予防には、保健・医療機関を有効に利用することがあること。また、医薬品は、正しく使用すること。」が加わりました。
 その内容は、中学校では、「医薬品には主作用と副作用があることを理解できるようにする。医薬品には、使用回数、使用時間、使用量などの使用法があり、正しく使用する必要があることについて理解できるようにする。」こととなっています。
また、高等学校では「医薬品は、有効性や安全性が審査されており、販売には制限があること。疾病からの回復や悪化の防止には、医薬品を正しく使用することが有効であること。」となっています。
 実際の授業は、中学校では2009年度からの先行実施を経て2012年度全面実施、高校では2009年度周知・徹底、2010年度から先行実施、2013年度から年次進行で実施となっています。 (図1)
【学校薬剤師の関わり】
 保健体育の授業(くすり教育授業含む)を担当するのは、保健体育教諭または、教育委員会から許可を受け授業を行える養護教諭(兼職発令を受けた養護教諭)であり、兼職発令を受けていない養護教諭や学校薬剤師は特例(表2)を除き単独で授業を行うことはできないこととなっています。
 しかし、2008年1月の中央教育審議会答申の中で「子供に生涯にわたり自己の健康管理を適切に行う能力を身につけさせることが求められるなか、医薬品は、医師・薬剤師の指導のもと、自ら服用するものであることから、医薬品に関する適切な知識を持つことは重要な課題であり、学校薬剤師がこのような点についてさらなる貢献をすることが期待されている」と提言されています。
そこで、学校薬剤師の役割については下記の3つのケースが推奨されています。
1. サポーターとしての役割
 ①教材・資料の提供(様々な医薬品サンプル、空箱、添付文書、模型実験)
 ②保健体育科教諭の指導案への薬剤師としての助言
2.T.T.方式への参画
 T.T.方式とは、ティーム・ティーチングと呼ばれる授業スタイルで保健体育
 教諭が学校薬剤師と養護教諭の協力のもと一緒に授業を行うことです。
 保健体育教諭が進行する授業で、あらかじめ打ち合わせていた発問や生徒か
 らの質問に学校薬剤師か答えるなどの工夫をする形式の授業です。
 事前の打ち合わせによって、いろいろな授業内容の可能性があります。(図2)
3. 学校薬剤師による授業(前記特例の場合)  
【教育の内容】
【教育の内容】
 医薬品は、使い方を誤れば、効果が期待できなかったり、副作用を引き起こす場合が有ります。こうした医薬品の誤用を防ぐとともに、医薬品に過度に依存したり、過度に避けたりすることなく、必要な医薬品を正しく有効利用することが大切であることを理解させることが目的となります。方法としては、グループディスカッションや実験が必要な場合も考えられます。
 参考として、日本学校保健会では、小・中・高等学校の「医薬品の正しい使い方」に関するパンフレットやそれらの指導者用資材も用意されています。また、日本教育研究所のサイトでも小・中学校の教材が掲載されています。
 授業の内容は、新学習指導要領をもとに決められます。中学校の保健体育では、「個人生活」とのかかわりを学ぶこととなっていますので、個人と医薬品、」、つまり「医薬品には主作用と副作用があることを理解できるようにする」「医薬品には、使用回数、使用時間、使用量などの使用法があり、正しく使用する必要があることについて理解できるようにする」ことを学びます。(例:中学教科書(東京書籍)
 高等学校の新学習指導要領では、医薬品の「社会との関わり」を学ぶこととなっており、「医薬品は、有効性や安全性が審査されており、販売には制限があること」、「疾病からの回復や悪化の防止には、医薬品を正しく使用することが有効であること」とレベルアップします。
 なお、小学校においても、一貫した教育という観点からも、医薬品について学ぶことは重要と考えられています。現在は、保健指導や総合学習で実施されるケースもあります。

 

参考資料

図2関係職員との連携

(2015-07-17 ・ 62KB)

中学教科書(東京書籍)

(2015-07-22 ・ 2512KB)

東京薬科大学薬学部教授
薬学教育推進センター
  日本くすり教育研究所 代表 加藤哲太先生 提供
苫小牧市民薬局株式会社
〒053-0034
北海道苫小牧市清水町1-5-29
TEL.0144-38-3055
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